通関士の日常 TOPへ戻る


【通関士の仕事】
私が働く通関業者は、規模が小さいため一人で何でもやらなければいけません。他法令が絡む例として、果物を輸入した場合の仕事の流れを紹介します。

〜船舶入港前〜
・大体入港1週間〜3日前位にお客さんから通関書類が届きます。書類が届いたらまず、書類に不備が無いかチェックします。入港するまで、出社した時・昼休みの後・会社を出る前の1日3回くらい当該船舶の動向をチェックします。
今回は果物ですので、他法令として、植物防疫法と食品衛生法が絡んできますので、忘れずに許可承認をもらうようにします。←忘れたら一大事

・書類のチェックが終了したら植物防疫所に対して植防申請を行います。この申請を行うとによって、入港後(基本的には入港の翌日)に植検(輸入植物検疫)を行うことができます。

〜入港の2〜3日前〜
・お客さんから頂いたオリジナルB/L(船荷証券)とTHC(ターミナルハンドリングチャージ:通常は小切手)をもって船会社またはその代理店へD/O交換へ行きます。D/Oとは荷渡指図書のことで、D/Oを船会社へ差し入れた人に船会社は貨物をリリースします。貨物そのものと言っていいくらい重要書類です。

・コンテナターミナルに対して、コンテナの搬出手続きを行います。いつ、どこの運送会社を使って、どこまで運ぶのか?という内容の連絡です。この搬出手続きによって、ディスパッチというものが交付されます。
ディスパッチは運送会社がコンテナターミナルへコンテナを引き取りに行った際に、ゲートで見せたり特定の暗証番号をマイクへ向かってしゃべったりするので、忘れずに運送会社へFAXしておきます。

・食品等輸入届出の控えを作ります。通関日当日に届出を行うことが多いため、事前に作れるところは作っておきます。同時に輸入申告の控えも作ります。

〜入港日当日〜
・きちんと船舶が入港したのかを確認します。当日の朝出社してみたら船舶が遅れていたなんてことも良くあります。

〜入港後〜
・輸入植物検疫。基本的には立ち会いをします。検査結果だけでなく、貨物の状態をチェックする機会でもあります。検査結果が合格であれば問題ありませんが、不合格の場合は害虫を駆除するために植物防疫所指定の薫蒸庫といわれる倉庫で臭化メチル薫蒸か青酸ガスによる薫蒸を行います。
植検に合格した場合は合格証、不合格の場合は認可証が交付されます。これにより植物防疫法の許可承認を受けたことになります。

〜植検終了後〜
コンテナヤードで行われた植検が終わると、通関業者の倉庫へ保税運送を行います。そのために、保税運送承認申告が必要となります。会社のデスクで別の仕事をしていると、当該コンテナが到着した連絡や検数結果が記載されたタリシートがFAXで流れてきます。このとき、たまには倉庫へ行ってフォークを運転している人や、検数のおじさんと軽い雑談や世間話をして盛り上がっておくのも仕事を円滑に進める上で重要となります。

〜数量確定〜
タリシートに当該コンテナに何が何個入っていたのか?が記載されています。この数量に基づいて検疫所に対する食品等輸入届出と、税関に対する輸入申告を行います。
他法令の許可承認を全て取っていることが、輸入許可の条件でありますので、先に食品等輸入届出を行います。この時点で16:00過ぎになっていることもありますのでかなりあせってきています(日本のお役所は17:00までです)。税関には臨時開庁という17:00以降も手続きをしてくれる制度がありますが、検疫所にはありません。検疫所から16:45まで待っても届出済証が交付されてこない場合は、早く交付してくれと電話攻撃開始です。

無事届出済証が交付されたら、税関に対して輸入申告です。実際には予備申告を前日に行っていますので、上で書きました審査区分は分かっています。通関士は申告書の審査を行います。私が作った場合は別の通関士に審査してもらうことにしています。別の通関士が申告書を作った場合は私が審査します。2人の目でチェックしてミスを無くそうという自衛策です。

〜輸入許可書交付〜
晴れて貨物は内国貨物となりました。お客さんが貨物を取りに来て、国内流通に流していきます。全国の市場やスーパー、そのたもろもろへ私が通関した貨物が旅立っていく瞬間です。

と、平穏無事に手続きが行えた場合はこのような感じになります。
実際には、税番についての見解でお客さんや税関と相違があったり、貨物が無くなったり壊れていたり、外国貨物のまま廃棄や滅却を行うこともあります。低温コンテナ(REF VAN) で輸入するはずが常温コンテナ(DRY VAN)で送られてきてそのまま海外へ積戻しをすることもあります。お客さんが関税を支払えない場合だってあるのです。

〜結び〜
世界各国との輸出入手続きにおいて、平穏無事に輸入許可を得ることのほうが少ないかもしれません。見たことも無い貨物や様々なトラブル、稀なケースに冷静に対応し、国内流通にお客さんが希望する日程で乗せらる状態にする、カンタンなようで非常に難しい奥の深い仕事です。
また、資格の予備校が言うようなスマートな仕事ではありません。泥臭い、作業員のような仕事もありますが、あなたが通関士の仕事に興味をもっていただければ幸いです。いつか現場で出会えるといいですね。


【通関士の給料】
はっきり言って安いと思います。通関士だから特別な給料をもらっているかといえばそうではありません。
基本的に通関業務だけを行う通関業者は少なく、倉庫や運輸業者が通関業務を行っていて、そこの通関士として所属するケースが大多数です。
この業界の給料は他業種の平均に比べて低く、通関士はそこに0〜2万円くらいの手当てがつくくらいです。


【通関士合格後の就職】
この業界で必要とされる人材の順位は下のようになります。

経験を積んだ通関士>通関士ではないが実務経験を積んだ人>実務未経験通関士>経験も通関士もなし

もしあなたが別業界から通関士を取得して、この業界へ飛び込んでくるのであれば、就職活動はとても大変なものになるでしょう。私も別業界から転進した身でして、実務経験なしということで、門前払いを数え切れないくらいもらいました。
しかし、自分の目指すところを自信をもって伝えていった結果、正社員での採用を勝ち取ることができました。
最初から正社員というのが理想かもしれませんが、例えば年齢的なものやこれまでの職歴など、正社員として雇われにくい条件があなたにあるかもしれません。
最初は契約社員や派遣社員で業界へ飛び込んで修行するというのも良い方法ではないでしょうか?この業界はある意味職人の世界です。実務経験を積めばどこからかいい話が舞い込んでくるものです。


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